異文化理解について(イスラム) 2001.1.14毎日新聞



 山内昌之東京大学教授が「インドネシア味の素」事件について、「イスラム理解のために」ということで寄稿している。山内教授はこの事件をふまえて、今後のイスラムに対する外交や経済活動の指針を5点にまとめている。
 第一に、外務省においてイスラム研究を拡充し、それを政策に反映させる努力が必要であること。第二に、若年層を中心とするイスラム関係国との人的交流を積極的に進めること。第三に、日本の学校教育におけるイスラム理解を深めること。第四に、イスラムに関するホームページを設立する必要性があること。第五に、「文明間の対話」に向けてイスラム世界との対話を促進する必要があること、である。
 とくに私も高校で世界史教育に携わっている身であるから、この事件の責任の一端があるのかもしれない。自分が高校で世界史を学んだ20年前は、「コーランか、剣か」といった西洋からのイスラム観一辺倒であった。教員になった15年前、ようやく西洋からのイスラム観が打破され、「コーランか、剣か、貢納か」と教え始めた。新規採用の研修ではこのイスラムをテーマに研究授業を行い、先輩教師からアラビア語は右から左に書くことを指摘されたのが今でも懐かしい。21世紀を迎えた今、確かにイスラムについての日本人の理解についてもかなり進んできたとは思う。しかし、一般的にはまだまだ十分ではないことがこの事件で露呈した。
 山内先生が指摘しているように、イスラムに関する教材開発は急務であろう。そして、学校教育のかなり早い段階からイスラム文化と接する環境づくりをしていくことが大切ではなかろうか。小学校における英語が取りざたされているが、英語圏だけでない異文化との接触の機会をぜひとも考えてもらいたいものである。