イスラムと金融について 2001.2.1日本経済新聞



 「インドネシア味の素事件」は記憶に新しいが、イスラム教の教えは金融にまで及んでいる。聖典コーランは豚肉を食べることを禁止してているが、また利子を取ることも禁じている。これは過剰な不労所得を得ることは好ましくないとの考えからだそうだが、これだとイスラム諸国には銀行というものはないのだろうか。
 しかし、イスラム諸国にも以下のような教えにかなった銀行を設けている。
 1.共同投資(ムシャーラカ):資金提供者と事業主がリスクと利益の配分比率を決めて共同経営を行う。資金提供者も経営に参加することが特徴で、会社財産を持たないという点を除けば合資会社の形態に近い。資金提供者も経営に参加することが特徴である。
2.持ち分資本(ムダーラバ、キラード):資金提供者と事業者の間に損益分担比率に関する協定を結び事業者に経営を任せる方式。銀行は預金者との間では事業者(代理人)となって預金者の提供する資金を運用その利益を分け合う。次に銀行は資金提供者となって融資先と別のムダーラバ契約を結び、事業からあがる利益(損失)を分配する。
3.ムラーバハ(ハイヤーパーチェース):資金の貸し主が借り主に代わって財を購入、それを借り主にマージンを加えて割賦販売する。利子ではなく売買益という解釈だが、実際には、貸し主は代金を立て替えるだけで財は直接借り主の手に入り、あらかじめ決まった金額を上乗せして代金を後払いするだけであり、限りなく利子に近いので限定的に認めるイスラム学者もいる。現実には貿易金融などイスラム銀行で最も多く運用されている形態である。
4.リース(イジャーラ)、割賦販売:財を必要とするものに代わって、資金提供者が購入し、使用料を取って貸与する。使用料が財の価格プラス「マージン」になったところで所有権を移転する「イジャーラ・ワ・イクティーナ」と呼ばれる方法もある。
5.貸付け手数料:最も確実に利益を上げる方法だが、利子を手数料に呼び方を変えただけで、イスラム法に悖ると解釈するもいる。
 イスラム銀行は「利益・損失分与口座」を設けて預金を集め、上記の方法を組み合わせて資金運用する。利子なし金融のみに特化する銀行と、有利子金融を行う一方でイスラム金融部門を設けている銀行と2種類ある。

 このようにイスラムの教えはありとあらゆるところに影響を及ぼしているが、それをうまく解釈してすり抜けいているのである、といえば語弊があろうか。

[参考資料]「地理・地図資料(帝国書院)2000.8」