スウェーデンのシンドラー 2001.2.9読売新聞  



   スピルバーグ監督の映画「シンドラーのリスト」は衝撃的であった。斬殺シーンが淡々と映像化され、見終わった後、背筋が寒かったのを今も覚えている。人の命がこれほどまでにもろいものなのか、つくづく考えさせられた。
 そのシンドラーと同様にホロコーストからユダヤ人を救ったスウェーデン人ワレンベリ氏の記事が掲載されていた。彼はスパイ容疑でソ連当局に逮捕され、スターリンによって粛正されたといわれる。その消息を求めてスウェーデン、ロシア双方が合同で調査しているが、結論は出ていないとのことである。ソ連が崩壊して10年が経過した今でも、粛正に関する調査研究には大きな壁が存在し、進んでいない。これは、粛正に関係する人物がまだ相当に残っており圧力をかけているのか、また公開した場合遺族や関係者に大きな波紋となることを配慮しているのであろう。もうしばらく時が必要なのかもしれない。