復権進む陳独秀 2002.7.3朝日新聞他
        
 
 



 中国の近代化運動五四運動の「総司令」、中国共産党の創設者、そして中国トロツキズム運動の指導者であった陳独秀の復権運動が中国で進んでいる。世界史の教科書では、五四運動、さらに中国共産党の創設で登場してくる彼だが、トロツキストであったことは知らなかった。彼は1927年の上海クーデタで第一次国共合作の誤りを認識して中国共産党総書記を辞任した後、トロツキーに接近、1931年にはトロツキー派の中国共産主義同盟の総書記に就任した。翌32年、トロツキストとして蒋介石によって逮捕され、37年日中戦争が始まるまで南京において投獄されていた。
 東京大学大学院佐々木力教授によると彼は「今日のアメリカ型リベラル・デモクラシーとは別の型の民主主義を体現して生きた思想家・革命家であり」(中略)「彼が生涯を貫いて唱道した思想は、簡単に言えば、被抑圧民族・被抑圧階級に依拠する反帝国主義的民主主義であった。(中略)『根元的民主主義』の思想の現れであった(中略)『中国のトロツキー』と呼ばれるべき陳の全生涯を特徴づければ、『根元的民主主義の永久革命者』が最も的確であろう』と述べている。彼への再評価が進んでいる一例である。
 彼の復権はまだ学問上のことで、政治的にはなされていない。しかし、彼の業績が明らかになることは、中国の近代化運動を考える上で大変重要である。今後の研究に期待したい。